11月20日(木)2025年度ゼロエミッション研究会第4回勉強会を開催
ゼロエミッション研究会
あらゆる廃棄物を原材料などとして有効活用することにより、廃棄物を一切出さない資源循環型の社会システム=「ゼロエミッション」
当財団では、ゼロエミッションの実現に向けて、2017年より食品小売業・外食産業の店舗から発生する廃棄物(特に食品循環資源)の発生抑制・資源循環・適正処理の手法を学ぶ場として、「ゼロエミッション研究会」を開催しています。
第4回ゼロエミッション研究会
11月20日(木)に一昨年から3回目となるゼロエミッション研究会の分科会として志岐理事主催の排出事業者を対象とした廃棄物勉強会・第3回ゼロエミッション研究会をを開催しました。42社80名の方に勉強会にご参加頂きました。
「廃棄物処理のからくりと循環型構築へ」と題して、志岐理事に、「小規模飲食店における食品廃棄物対策について」と題して、神戸大学大学院経済学研究科の小島理沙氏に、「フードバンクについて」と題して、慶応義塾大学SFC研究所の安岡澄人氏にご講演いただきました。
- 「廃棄物処理のからくりと循環型構築へ」 アーバンベジ株式会社 代表取締役 SEF理事
志岐 秀明氏
産業廃棄物のからくりを知るために、スーパーから出る廃棄物(プラ・生ごみ・汚泥・廃油)の処理方法(焼却・破砕・圧縮、固化(RPF)・発酵や乾燥・中和処理)についてどれを選択するべきか、いかに減量するかが鍵になる。廃プラを例にたとえると、中間処理で焼却を選んだ場合、高コストとなり通常は燃え殻だが高温処理は廃棄物ゼロとなり、最終処分は不要となる。中間処理で破砕した場合、低コストとなり細かいプラは材質により容積は減るが重量は変わらず、最終処分は埋立ての場合、同等の量(*RPF処理へ委託や、原材料として販売もある(再委託の危険有り)。中間処理埋立ての場合、同等の量(RPF処理へ委託や、原材料として販売もある(再委託の危険有り)。中間処理が圧縮固化(RPF)の場合中コストとなり、燃料となり販売する(*廃棄物は原材料となるが燃料価格は低いため、加工費が必用(処理費用)、最終処分は製紙メーカーなどに売却する。発泡スチロールは、溶融固化し、再資源化で販売される。参加の皆様に生ごみの処理方法について考えていただいた。
廃棄物の適正処理のポイント(委託処理前提)として、産業廃棄物の管理(廃プラ、廃油、金属類、ガラス、陶磁器、汚泥など)は①廃棄物処理が、生活環境の保全・公衆衛生の向上に沿っていること、②法的要求事項に際して適切な運用がされているか?、③最初に決めたとおりの処理フローで処理が遂行されていること、④適切なコストの把握、事業系一般廃棄物(生ゴミ、紙ごみなど可燃物類)は条例の定めに沿うことについて説明していただきました。
産業廃棄物の適正処理ついて、委託先確認~契約~回収までの道筋、委託前の現地確認と定期的な確認についてお話いただきました。
また、食品製造・販売においての残渣や売れ残りの未利用資源の再生はみんなで協力して負担しましょうとの話もしていただきました。

- 「小規模飲食店における食品廃棄物対策について」 神戸大学大学院 経済学研究科
小島 理沙氏
環境省の令和6年度補正予算、食品廃棄ゼロエリア創出モデル事業等の実証実験で水道筋商店街界隈の食品ロスゼロ実証事業についてお話していただきました。商店街のお客さん向けのキャンペーンやイベントを行った。商店街の20店舗に食品廃棄物削減の取り組み前後における廃棄物の量を計量し、実施期間は2週間うち1週目は通常営業、2週目は食品廃棄の削減を意識した営業をしてもらった。飲食店・小売店での取組として、①食品ロス削減協力店ポスター掲示、②配膳量の調整、③お客への声かけ、④仕入量の調整、⑤未利用食品の活用、⑥他店舗との協力、⑦お客への意識啓発を行った。商店街内の食品ロス削減キャンペーンでは大学生も参画し、食品ロス削減の工夫を学ぶクイズなどのイベントを5日間開催、商店街を訪れた買い物客や家族連れなど、子どもを含む計261名の方々が参加した。実施結果は廃棄物の発生状況として総廃棄量の合計:832.51kgでした。廃棄物の処理方法は食べ残し、売れ残り、動植物性残渣など塩分や油分が多いもは民間の処理施設でメタン発酵、野菜くずやコーヒーかすなど塩分や油分が少ないものはLFCコンポストを活用して堆肥化し、出来た堆肥を活用し、農作物を栽培した。事業系一般廃棄物、食品廃棄物(メタン化・コンポスト化)いずれも取組前よりも減少した。取組の課題として、①取組みによる減量効果、②意識啓発の効果、③店舗の意識が見られた。取組の課題として①来客・販売予測精度の向上、②コンポストの課題と可能性、③メタン化の活用検討、④小規模店舗の協力ハードル、⑤食品廃棄物量の確保、⑥食品リサイクル費用と焼却費用の価格差があったとのお話をしていただきました。

- 「フードバンクについて」 慶応義塾大学SFC研究所
安岡 澄人氏
「経済的に困窮している方々の食品アクセスの確保と「大人の食育」についてお話しいただきました。農林水産省が食料安全保障の改正基本法(食料の総量確保や不測時の食料確保が中心。これに加えて、今回の改正法では、一人一人が必要な食料が入手(アクセス)できるよう、平時の食料安全保障が位置づけられた)で新たに位置づけられた「食品アクセス」を政策課題として位置付けた。高齢者を中心とした過疎地だけでなく都市部でも見られる「買物困難者」の問題(物理的アクセス)や経済的な理由により十分な食料が確保できない方々の問題(経済的アクセス)などがある。経済的に困窮している方々への食支援活動として、「フードバンク」や「子ども食堂」などがある。フードバンクは2002年に始まり、東日本大震災以降団体数が増加している。子ども食堂は2012年に始まり、コロナ禍で団体数が顕著に増加し、2024年度全国で10,867箇所となっている。食品寄附の現状は、令和5年度におけるフードバンクの食品取扱量は、いまだ推計約1.6万tにとどまっている。寄附食品は、事業系、食品系とそれぞれに発生する食品ロスの一部にとどまっており、活用できる余地は大きく残されている。食品企業などの意見として、①どこが信頼できてどこに提供したらよいかわからない、②きちんと困っている人に届くのだろうか(横流れしないか)、③食品としてきちんと衛生管理が行われるのか、④不適切な取扱いでブランドを棄損するのではないか、⑤手間がかかり、他の手段の方が楽。受け入れ体制が不十分などがあげられた。経済的な食品アクセスの確保に向けた課題と対応として子ども食堂が必要としているものが手元に届かない、需要と供給がかみ合っていない。フードバンクが取り扱う食品は、年々増加しているものの、利用される食品は、まだ少なく不足(約1.5万トン)している。提供側の食品企業が安心して提供できるように、寄付食品の管理、食品衛生など、安心して供給してもらえる環境づくりを進めている。
朝食欠食、野菜不足など健全から程遠い若者の食、孤食・栄養不足などが目立つ高齢者の食など大人の食が悪化している。こんなに食が豊かな国なのに、食や食の時間が貧しく、無機質化、人生も楽しそうでない、フランスやイタリヤのように食をもっと愉しめないのか。これまでの食育は、学校や子供への「食育」が中心だった。「大人の食育」がこれからは必要、新たな価値を作り、食の愉しさなどの便益を実感しないと、大人の消費者は変わらない、日常の食の愉しみ方を再発見し、体験を広げる。誰でももっと食を愉しめる環境や機会をつくる、食をもっと愉しみ幸せにするための「大人の食育」の戦略を考えたいとのお話をしていただきました。

参加企業からの声
「環境を考えるとリサイクルに回さないといけないのに、焼却よりもリサイクルの方がコストが掛かるのが問題と再認識させられた。」「廃棄物に関する一連の流れで、初めて耳にすることが複数あった。弊社では管理会社を経由して収集運搬会社を取りまとめてもらっているが、管理会社への要求は収集頻度や金銭面だけだったので、最終処分までの流れ(特に産廃)について確認する必要があると痛感した。」「事業者の意識が変わるだけでも排出物の削減効果が出てくるといった結果もでており、社会全体での意識が変われば、自然に廃棄物も減ると思う。どのようにして社会の意識を変えるかも考えていかないといけないと認識させられました。」「コンポストはにおいが課題と固定観念がありましたが、継続希望の店舗需要がある事は新たな発見となりました。自社導入等、前向きに考えたいと思います。」「健康的な食事ができない、または、十分な食料が買えない世帯がこんなにいるとは思わず、びっくりしました。」「当社は食品寄贈について災害時を除いて実施していません。安岡様のお話をきいて、食品寄贈について、取り組まなくてはいけないと思いました。」
と、参加者からは大変勉強になったとの感想をいただきました。
- 2025年度 ゼロエミッション研究会
2025年度のゼロエミッション研究会は、1月29日(木)を予定しております。
ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
ご参加の程お待ちしております。
- 2025年12月17日
- カテゴリー: イベント・ボランティア報告, 事業活動報告, 資源循環事業
- タグ: セミナー








