森林再生事業
自然の恵み豊かな社会を未来の子どもたちに引き継ぐため、4地域6カ所(約84ha)の森で再生保全や森の資源を活用する活動、森の機能や持続可能な社会について考える環境教育を行っています。
なぜなら、森の恵みを活用することは持続可能な循環型社会に繋がり、多様な生き物が生息する生態系豊かな森は人と自然が共生する社会に繋がるからです。
私たちの取組み
1.森林の再生保全
人工林の森では、森に光を入れるための間伐や、新たな苗木を植え育てる植樹・下草刈りなどの活動を行っています。森に光が差し込むことで植生が豊かになり、チョウ、トンボ、バッタなどの昆虫も生育し、鳥のさえずりも聞こえる森にかわりつつあります。
里山の森では、在来種が生息できる環境づくりをめざしています。森で暮らす生き物の命の環を守れるよう、森の自然環境調査をしながら生態系に配慮した保全計画を作成し、活動しています。
2.森林資源の利活用
森を再生するために行う間伐作業によって発生する間伐材は、大切な資源です。例えば『木の駅』へ運搬し地域でストーブやボイラー用の薪として使用したり、ペレットに加工して活用します。また、森で活動する子どもたちのクラフト材料や野外調理体験の薪としても使用します。
資源を活用することは森に手を入れることに繋がり、森の再生も進みます。
3.環境教育
間伐や下草刈りなど森林再生活動の体験、親子で参加できる森の散策や自然観察、イベント、環境調査の専門家と連携した生物調査への参加などの活動を行っています。
かつて、子どもたちは仲間と共に野原をかけまわり、自然の中で多くのことを学びながら育ちました。しかし今、子どもたちの生活の中から、自然と共にすごす環境や時間がなくなりつつあります。さまざまな生き物とふれあい、五感で自然を感じる。命のつながりや森の果たす役割を学ぶ。自然と共に生きるくらし、地域の歴史や文化、生物多様性、資源やエネルギーの問題を考える。子どもたち自身が持続可能な未来へ向かう力を育めるように、それぞれの森の特性を活かした体験の機会を提供しています。
森からのレポート
千葉県山武市 板川の森・埴谷の森・日向の森
山武市は、かつて良質なスギ材として有名な「サンブスギ」の産地で、木材の一大供給地として栄えたことから、スギの人工林が多く存在しています。
しかし近年、外国産材の普及による木材価格の低下、サンブスギ特有の“非赤枯性溝腐病”という病気のまん延により、山武地域の林業は徐々に活気を失い、人の手が入らなくなってしまった人工林が増加しています。
森林再生事業における私たちの前身であるRFLの活動は2006年、ここ山武市の「板川の森」と「埴谷の森」から始まりました。そして2012年からは山武市と「日向の森」の保全活動に関する協定を締結し、現在では3ヵ所約20haの森林保全活動を行っています。
その活動は、林内で作業を行うための作業道づくりから始まりました。その後、木々の密度を調整し森に光を入れる「間伐」を行い、徐々に明るく豊かな森へとかわりつつあります。
都心から1時間半程度とアクセスしやすく、多くの方にボランティア活動へのご参加を頂いています。間伐作業のほか、新たな苗木を植える「植樹」、苗木の成長を邪魔する草木を除去する「下草刈り」などの手入れを、年間延べ平均800名超のボランティアに支えられながら行っています。
長野県東御市 東御の森
「東御の森」(市有林)では、東御市と森林保全活動に関する協定を結び活動しています。
湯の丸高原から南側へ広がる緩やかな扇状地の中間に位置しており標高は約1.000m、周辺では高原野菜や東御市の特産であるクルミ、ワイン用のブドウが栽培されています。
森の中央には地域の水源である所沢川が流れ、森と水に恵まれた景観が広がっています。かつては薪炭や馬の飼葉を得ていた里山ですが、戦後カラマツとヒノキが植林されました。カラマツ、ヒノキ、オニグルミ、キハダ、サンショウをはじめとする多くの樹木があり、山野草、トンボやチョウなどの昆虫、小動物も生息し、身近な生物多様性が維持されています。土地の歴史は古く奈良時代には朝廷へ献上する馬の牧がありました。江戸時代から伝わる史跡も残されています。
この森は上小森林認証協議会が管理するSGEC森林認証林の一部として、持続可能な森林経営が計画的に実施されています。水土保全・水源涵養機能をもち、天然林・里山区分として生物多様性保全に配慮しています。
SEFでは定期的な自然環境調査、在来種保全のための特定外来植物(オオハンゴンソウ)の抜取などの保全活動、森の生態系や機能についての理解を深めるための環境教育をおこなっています。親子散策主体の「市民の集い~ふるさとの森を歩こう」(東御市と共催)、森の生物多様性や機能への理解を深める森林環境イベント(観察会など)を実施する他、東京都内の中・高校生への森林林業体験学習プログラムを提供しています。
大分県臼杵市 臼杵の森
臼杵市の産業発展を支えた清らかで豊かな水。その源である森林は、市の総面積のおよそ7割を占めています。しかし、後継者の不足や木材価格の低下など、林業従事者を取り巻く環境は全国同様に厳しく、手入れが行き届かなくなり機能が低下した森林が増加してしまっています。
臼杵市と森林づくりに関する協定を締結し、2013年2月から活動を開始した「臼杵の森」では、林業の観点から本格的な森林保全を推進するための準備を進めています。
この取組みの特徴は、地域の資源を有効に活用して林業経営の安定化に繋げ、林業事業者主体による森林保全を推進するモデルであるということです。地域の林業事業者に業務委託をし、「森林経営計画」を策定・申請することにより受けられる国からの補助金に加え、未利用材(間伐材や林地残材等)を活用する小規模木質バイオマス発電所を設置・運営し、地域に電力や熱を供給することにより得られる収益で、森林保全活動を推進していこうというものです。
兵庫県丹波市 ウッディミナミの森
兵庫県丹波市では、地元の市島南自治会が主体となって活動している『ウッディミナミの森』の森林保全活動に参加しています。自治体の活動と並行して私たちが中心となってボランティアを募り、「災害に強い森林づくり」をテーマとした保全活動を推進しています。
間伐作業で出る間伐材は、地元NPOが立ち上げた『木の駅プロジェクト』に搬出し、地域で薪ボイラーや薪ストーブ用の薪として活用され、その収益は活動費用に充てられます。
他団体との協働
このほか、大阪に本拠を持つNPO法人 日本森林ボランティア協会が主催する森林保全活動へのサポーターの参加斡旋や、アサヒビール株式会社様が広島県庄原市周辺に所有する社有林「アサヒの森」をフィールドとした森林保全活動体験の開催など、他の森林保全団体との連携により、各地で活動を展開しています。