「飼料化」実践実例

CASE2
廃棄物全体の観点からリサイクルに取り組み
コストを削減、リサイクル・ループを構築
株式会社髙島屋 横浜店・港南台店

食品廃棄物を有効に生かす「リサイクル・ループ」

大手百貨店髙島屋のうち、神奈川県に拠点を置く横浜店と港南台店(以下、髙島屋)では食品廃棄物の飼料化に積極的に取り組んでいる。さまざまな店舗が入る百貨店では食品売り場やレストランなど、食品廃棄物が出る場所は多岐にわたる。中でもその多くを占めるのが惣菜売場やベーカリーなどの売れ残りだ。百貨店の食品売り場という性質上、閉店間際まで一定量の商品を棚に残しておく必要があるため、この発生はやむを得ない。それを有効な方向に生かすことを髙島屋では推進している。

髙島屋が選んだ手段は「リサイクル・ループ」だ。その取り組みは2004年にさかのぼる。横浜市有機リサイクル協同組合の飼料化施設稼働に合わせ、食品リサイクルへの取組みを開始。乾燥飼料化された食品廃棄物で飼育された豚を「アリタさんちの豚肉」として販売してきた。その後、協同組合が操業停止したため、処理場での焼却処分を行わざるを得ない時期もあったが、2015年8月以降、日本フードエコロジーセンターで液状飼料化を進め、再びリサイクル・ループの実現を模索している。

CSRとして廃棄物全体のリサイクルを実施

百貨店は食品リサイクル法の対象外だ。法の規制という観点からは、食品リサイクルに取り組む義務はないが、髙島屋はCSRとして取り組んでいる。これは食品廃棄物だけににとどまらず「廃棄物全体の分別」という観点で行われている。つまり、「リサイクル」は髙島屋の企業姿勢の一つであり、従業員の共通認識となっている。


分別を徹底させるためのポスター類

飼料化を進めるにあたっては徹底した分別が必要だが、その教育を担っているのが2001年のISO14001認証取得以降、各売場に配置されている「環境保全員」だ。環境保全員は廃棄物の分別状況の確認や指導などを現場の責任者に行うが、その際に「分別の意味」や分別された廃棄物の「行き先」といった、分別することの大切さやその先のリサイクルにつながることについても伝える。こうした啓発活動によって、自らの行動が環境保全や社会的に意義のあることということも意識づけられる。また、担当部長が定期的に売り場や廃棄物集積所の状況を確認して環境保全員会議でフィードバックすることで、常に点検と改善が行われている。

リサイクル・ループがいったん構築できても関係事業者の状況で寸断されてしまうこともある。運搬業者がいない、リサイクル先がない、といった地域の実情にも左右される。しかし、髙島屋ではリサイクルを中断せざるを得なかった間もルールを変えずに分別を継続。スムーズな再開につながった。継続して取り組む姿勢の大切さがこの事例から学び取れる。

髙島屋での取り組みの工夫

POINT1 現場の負担の軽減

専用カート

実際に分別や選別作業を行う現場従業員の作業負担を極力軽減するために、売り場ごとで収集のしかたを工夫。食品廃棄物の発生量の多い惣菜売り場などには専用カートを配置。従業員は食品廃棄物を分別してカートに投入するのみで、専用カートは収集運搬業者が回収。

POINT2 外部との積極的な連携

フィードバックをポスターにして掲示

食品廃棄物は収集運搬業者を通じて飼料化事業者に運び込まれているが、分別などについて飼料化事業者から出た意見やアドバイスを収集運搬業者が髙島屋にフィードバック。髙島屋社内での分別指導などに反映されている。外部事業者との意思疎通が図れているため、問題が発生してもスムーズに解決できている。この連携がリサイクルを推進するうえでの大きなポイントとなっている。

POINT3 コスト削減への取り組み

食品以外の資源の分別回収

コスト面だけで考えると、実は焼却処分の方がはるかに負担は軽い。飼料化に取り組むことでコストは増加するが、他の資源の回収方法やリサイクル方法を改善することで、そのコストを吸収。収集運搬業者との協力体制によって、廃棄物関連コストをトータルで削減することで実現している。

この事例の評価ポイント

・廃棄物管理の観点から分別を徹底し、その一環として食品廃棄物の飼料化に取り組んでいる。そのため、従業員の理解が得やすく浸透しやすい。

・定例会議で部門長へ分別状況のフィードバックや指導が行うなど、教育・チェック体制が整っている。

・外部の関連事業者との連携がうまくとれている。収集運搬業者が積極的に現場に入ることで分別の仕組みを改善する体制がとられているほか、飼料化事業者との間の情報共有が密に行われている。

導入を目指す事業者へのアドバイス

・飼料化への取り組みをよりスムーズに進めるためには収集運搬業者とのコミュニケーションが大切。

・食品リサイクル単体ではなく、廃棄物全般の観点に立ち、その一部として飼料化を取り入れることで、排出者の負担を軽減できる可能性がある。

農林水産省生産局

平成27年度エコフィード増産対策事業
食品残さ等飼料化分別普及体制構築事業